『症例2: 80歳男性 主訴左下肢痛』に関する解説
三浦レポートとは・・・
1991年、厚生科学研究として「脊椎原生疾患の施術に関する医学的研究」と題した報告書が提示されました。この研究は、当時非国際基準カイロプラクターによる施術ミスによる患者の訴えが相次ぎ、厚生労働省(旧厚生省)が東京医科大学の三浦幸雄教授に研究をゆだね、他7名の整形外科が研究協力者として行われました。これが通称「三浦レポート」と呼ばれています。
三浦レポート症例2 80歳 男性
主訴:左下股痛
(現病歴)2日前から左下股痛が出現し医療機関受診、加療を受けるも歩行痛が出現したため、友人の勧めでカイロプラクティック受診し加療を受けたところ歩行困難となり、医療機関入院となる。
(Xp所見)腰椎は傾斜し、多発性の椎間板変性があり、特にL4/5、5/Sに強く、L4/5椎間板腔は殆ど消滅している。前縦靭帯の骨化が著明で、椎体間の架橋形成が進行している。
(腰椎部脊髄造影像)L4/5を中心とした造影剤の通過障害があるが、脊椎カン狭窄の所見である。
(コメント)本例は、変形性脊椎症による脊椎間狭窄状態にカイロプラクティックのために神経根症状の憎悪をきたした症例である。
【解説2】
医学的側面
高齢の男性のおける急性発症の片側下股痛、しかも症状の進行がみられた症例に対して施術(おそらく腰椎に対してであろう)が行われた症例です。
医学的な視点では、コメントにいたる根拠も含めて異論を挟む余地はありません。せいぜい「脊柱間」が「脊椎管」の誤記であろうことを指摘するのみです。
カイロ的側面
一方、カイロに関しては、カイロの職業生命が奪われかねない、そして代替医療の一翼としての存続さえ危ぶまれる、重大な問題が示唆されます。当該カイロプラクターの資質に関して、2つの問題点が浮かびあがります。すなわち、医学的知識と検査技術です。医学的知識の観点で問題を探ってみると、片側下股痛から神経根障害を想起することができなかった、神経根障害を評価する検査法を知らなかった、検査結果から正しく病態を評価できなかった、などの可能性が考えられます。検査技術の観点では、検査を正確に実施できなかった可能性が挙げれます。この症例は、カイロプラクターの医学的知識の低さと脊椎マニュピュレーションの危険性を世に訴えるのに格好の材料となり得ます。
医師の立場からカイロプラクターに忠告させていただきましょう。急性発症かつ進行性の片側下股痛の患者に対しては、神経学的検査やカイロ検査の結果がどうであれ、一刻も早く専門医受診を勧めるべきです。
症例の事実性
この症例の現病歴は、医療機関に入院となった時点から遡った経過がそれに相当します。2日前に発症した下股痛が医療機関による加療で改善せず、むしろ歩行時痛も伴うようになった(悪化)。ごく一般論として言えば、友人の薦めがあったにせよ(あるいは無かったにせよ)、これだけの急性発症・悪化の状況下で友人はカイロ治療を薦めるでしょうか。そして本人はそれに賛同するものでしょうか。これは事実だ、と言われればそれまでですが。カルテを開示していただければ、真実は明らかになりましょう。

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1972年うまれ。東京都出身。
東京医科歯科大学医学部卒業。
福島県立医科大学整形外科で9年間臨床と研究に携わる。
東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック講師
医学博士。統合医療学会認定療法士。
「三浦レポートを考える」全バックナンバー
1. 三浦レポートを考える: 報告書に対する過去の検証
2. 4つの症例報告と検証における3つの視点
3. 『症例2: 80歳男性 主訴左下肢痛』に関する解説
4. 『症例3 61歳男性 主訴:両上肢しびれ』に関する解説
5. 『症例4 79歳男性 主訴:左肩痛』に関する解説
6. 三浦レポートに関する解説---最終回





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