三浦レポートに関する解説---最終回
三浦レポートとは・・・
1991年、厚生科学研究として「脊椎原生疾患の施術に関する医学的研究」と題した報告書が提示されました。この研究は、当時非国際基準カイロプラクターによる施術ミスによる患者の訴えが相次ぎ、厚生労働省(旧厚生省)が東京医科大学の三浦幸雄教授に研究をゆだね、他7名の整形外科が研究協力者として行われました。これが通称「三浦レポート」と呼ばれています。
最後に
報告書がいう「国民の健康を守る立場からカイロの危険性を明確にする」ことは、「有効性を明確にする」ことと表裏一体です。医師がカイロの危険性を指摘するには、本症例報告のような重大な被害患者例を1例でも挙げれば効果は十分です。一方、カイロ治療の有効性を語るには、1例報告では全く不十分なのです。
無作為臨床試験(RCT: Randomized Controlled Trial)の手順を踏んで明らかにしなければなりません。それには、他の医療形態との協力が必須であり、しかも十分な症例数を集めるのに長期間を要します。このため、残念ながら我が国ではカイロ治療の有効性を示した研究報告は存在しないのが現状です。
しかし、21世紀に入ってようやく日本の整形外科も脊椎徒手療法に注目し始め、学会や書籍でカイロが取り上げられるようになってきました。この傾向は、欧米でカイロ治療の有効性が明らかにされていることに加え、医師自らが筋骨格系症状に対する医学的治療の限界を自覚し始めたからでしょう。したがって、整形外科医との共同研究という形でカイロ治療の効果を比較検討できる日もそう遠くはないかもしれません。
報告書は最後に、カイロに関する理論と客観的な有効性は明確にできないこと、社会的に認知されるためには科学的評価を受ける必要があることを提言しています。そのご指摘には異論はありません。しかし、報告書自体の真実性に大いなる疑念がぬぐえない以上、報告書にはカイロの非科学性をとがめる権利はありません。ぜひとも各症例の患者カルテを開示してもらいたいです。事実を明らかにしてもらわない限り、症例のねつ造疑惑は決して晴れることはありません。
ユルウス・カエサルはこう言います、「人間なら誰でもすべてが見えるわけではない。多くの人は自分が見たいと欲することしか見ていない」と。そもそもこの研究報告者はカイロの危険性を知りたいと欲し、それ以外の、たとえばカイロ治療の有効性はどうでもよかったのでしょう。報告書の作成当時、欧米でもカイロ治療の有効性を示す論文が十分でなかったにせよ、報告書の中では有効性に関する懸賞が明らかにおざなりなのです。
これまで指摘したように論文の科学性に問題があったとしても、カイロの危険性が問われることは免れられないのです。きちんとした問診と検査、カイロ治療の適否の見極め、安全な治療、専門医受信を勧めることを躊躇しない、などの基本を再確認してほしい。もし「カイロは万能」的な思い込みがあるのなら、早急にあらためなければなりません。
「脊椎原性疾患の施術に関する医学的研究」報告書が世に出されてすでに17年が経過しています。その間、欧米の歴史はカイロ治療の有効性を十分に語っています。また、この報告書に遅れること4年、1995年には国際基準のカイロ教育機関である我が校が開校され、すでに400余名の卒業生が巣立っています。彼らは筋骨格系症状のプリマリケアとしての役割を立派に果たしています。
このように、時代は変わってきています。報告書作成当時と比べ、世のカイロプラクターの質は確実に高まっています。今やカイロプラクターは、事実性も真実性も疑わしい報告書に惑わされる必要はありません。
カイロプラクター諸君、「脊椎原性疾患の施術に関する医学的研究」報告所の呪縛から解き放たれよ!

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1972年うまれ。東京都出身。
東京医科歯科大学医学部卒業。
福島県立医科大学整形外科で9年間臨床と研究に携わる。
東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック講師
医学博士。統合医療学会認定療法士。
「三浦レポートを考える」全バックナンバー
1. 三浦レポートを考える: 報告書に対する過去の検証
2. 4つの症例報告と検証における3つの視点
3. 『症例2: 80歳男性 主訴左下肢痛』に関する解説
4. 『症例3 61歳男性 主訴:両上肢しびれ』に関する解説
5. 『症例4 79歳男性 主訴:左肩痛』に関する解説
6. 三浦レポートに関する解説---最終回





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